ゼロエネルギー住宅
昨年7月に当社「ゼロ」を、新築ご入居いただきましたT様が、「年間光熱費ゼロ」を達成し、そのデータをいただきました(ありがとうございます)。 先ずは、表1のデータをご覧下さい。見事 年間トータル19,221円のマイナスを達成いただきました。昨冬は、暖冬ではありましたが、その影響は、暖房費金額にして、7,000円くらいだと、推定されます。給湯にも多少の影響は有ったと思われますが、平年に比べて金額的に有利であったのは、最大でも1万円内に納まると考えられます。
T様に予測提示しました暖房費は、2000年の平均気温からシミュレーションしまして、その額は、24,700円でした。この、2000年の平均気温より、冬期間を通じて2度平均気温が高い(平均気温2度差は、大きな差です)として計算し直すとその額は、17,900円になります。平年の30%減は割合としては大きいのですが、額としては、7,000円近似となります。
2003年「へいへいほー」誌上にて、「ゼロエネルギーハウスへの道」を発表させていただき、そのシナリオに沿って、「エコキュートの導入」、「暖房能力の高い、高性能エアコンの選択」と、3年をかけて、ステップアップ゚してきました。「必ず出来るはずだ」と言う信念が、ゆるぐ事はありませんでしたが、この様に、現実として構想どおりの結果を得られました事は、万感の思いです。T様をはじめ、社のコンセプトをご理解頂いたお客様皆様のおかげであると、本当に感謝申し上げます。
「もう、既にその予兆はあった」
ご存知の方も多勢いらっしゃると思いますが、「年間光熱費ゼロ」は、2年前に、K様ご夫妻が既に達成されています。このデータも「へいへいほー」誌上にて、紹介させていただきました。K様のデータもすばらしい物でしたが、ご夫婦お二人という事もありまして、「追い風参考記録」的に捉えていました。しかし、何の記録でもそうですが、追い風であれ、誰かが10秒の壁を破りますと、それが突破口になって、次の9秒台が記録されるものです。今回、K様からも継続計測中のデータのうち昨年分を、又、築3年目になる下諏訪のS様からは、昨年のデータを、H様からは2004年のデータをいただきました。そのデータより各邸様条件を表2-Aに、実績を表2-Bに、実績より太陽光を除いたものを表2-Cに作成しました。(灯油は76円/Lとして計算)
K様、S様、H様、の建設時点では、まだ「暖房能力の高い、高性能エアコン」は、発売されていませんでしたが、既に太陽光発電3K〜3.2K塔載で、年間光熱費3万円台が、実現していました。「後1KWの太陽光を乗せれば、ゼロになるな」という予想はこの方たちの実績から見て、無理なく立てられるものでした。
「省エネを評価する4方法」
省エネ度を評価する4通りの方法があります。その各4視点から、この4邸様の省エネ度を検討しようと思います。その4方法とは、「光熱費」「消費エネルギー量」「1次エネルギー換算値」「CO2排出量」の4通りです。
「光熱費」これは、まさしく、家庭内の消費エネルギーに対して支払うお金の合計です。一般に光熱費の安い住宅は、消費エネルギーも低いのですが、イコールと言うわけではありません。夜間と昼間の電力料金を比べると良くわかりますが、(時間帯別契約の場合)夜間の電力料金は、昼間の電力料金の約3分の1です。しかし使用電力1KWは1KWで、昼間、夜間で違いが有るわけではありません。T様宅でも、年間使用電力は、6,570KWHで有るのに対し、太陽光発電量は5,338KWH その比較ですと電力量は、1,232KWH不足していますが、夜間電力使用の比率アップ、オール電化割引等を工夫して、年間マイナス19,211円という結果になっています。「地球環境に対しての省エネ」と言う点では、他の3方法で評価すべきですが、「光熱費」で、省エネを管理するのは、「わかりやすい」「財布にやさしいのが、地球にも優しい」「建設における費用対効果の計算が容易」といった点で、特に優れています。当社の「ゼロ」シリーズが、年間光熱費=ゼロをコンセプトにしているのはその為です。
当社は、太陽光発電塔載を積極的に奨めていますし、太陽光発電も含めて、初期費用と、ランニングコストを評価いただくようお願いしています。しかし、一般家庭との光熱費を比較するには、太陽光発電を除いたほうが分りやすいと思いますので、表2-Cをご覧下さい。
この表2-Cからも分る様に太陽光発電を載せない状態で、「年間光熱費≦12万円は、当社では高い目標では無い」といえます。
「消費エネルギー量」
続いて「消費エネルギー量」とは、家庭内で消費されたエネルギーを金額でなく、その量で表すものです。住宅の省エネ性能を比較するにはこの数値が都合良い、と言えます。グラフ1に、各地域1世帯当たりの消費エネルギーと、4邸様の消費エネルギーを同時にグラフ化しました。(太陽光含む、太陽光除く、の2種)太陽光を除いたデータでも、九州地区の平均を下回っています。北海道地区平均に比べると2分の1以下です。
「1次エネルギー換算値」
「1次エネルギー」という言葉は、聞きなれないかも知れません、これは、住宅においては、主に電気が問題になります。例えば、火力発電を考えてください。石油を燃やして、タービンを回し発電し、その際にエネルギーロスをします。又、送電途中にもロスをします。その様な、いろいろなロスを工程ごとに積み重ねて、最終的に手元に電力が届きます。この電力と、単に石油を燃やした際に発生するエネルギーを比較すると、手元に届いた電気1KWHを得るには、石油を約3KWH使わなくてはなりません。この場合、「電気1KWHの1次エネルギー換算値≒3KWH」という事になります。ガス、灯油、は、「1次エネルギー≒2次エネルギー」として計算しますが、電気は、火力、水力、原子力等発電方法によって異なりますが、平均値として、「1次エネ:2次エネ=1:2.7」として計算します。「電力1を得るのに、ガス、灯油を2.7必要とするのです。地球全体から省エネを考えると、この1次エネルギーを削減しないと省エネになりません。ですから、オール電化で省エネを行うには、ヒートポンプの様な、高効率のシステムが不可欠とされます。
NEDO(新エネルギー、産業技術開発機構)という、独立行政法人があり、住宅の省エネシステムを申請しますと、審査後、認定登録し、補助金の対象としてくれます。当社も、住宅省エネシステム「ゼロ」「ファースト」他で、5年間認定登録を受けています。その申請を行う際の条件が、「標準世帯消費エネルギーを、1次エネルギーベースで、15%以上削減する事」というものです。表3は、NEDOが指示する「次世代省エネ基準地域ごとの、標準消費エネルギー」です。
この表3の内、2地域の標準消費エネルギーの数値を基準に、表2-B,Cに、黄色にて、削減率を塗りました。NEDO申請上は、「太陽光によって削減できると計算する電力は総発電量の内、自家消費分に限る」という条件があるので、太陽光発電を含む削減率は、この表の数値と違いますが、中部電力が買い取った電気も、捨てられている訳ではなく他の場所で利用されているので、地球環境全体としては、表2-Bの削減率になります。「15%以上削減」という先ほどの条件と、再度比較してみてください。
「CO2排出量」
地球温暖化の危惧が、毎日どこかの新聞、TVで言われる時代です。「京都議定書」で、日本は、2012年までに、CO2排出量の6%を削減目標とすることになりました。各産業部門でどれだけ、民生部門でどの位、という削減計画があるのでしょうが、住宅から排出するCO2量を減らすのが、住宅の省エネ性向上政策の最大の目的と思えます。
1次エネルギー消費と、CO2排出量は、普通ほぼ比例しますが、燃料電池のようにエネルギーは発生するが、CO2は排出しないといったエネルギー源もありますので、一概に言えません。
家庭内から発生するCO2量は、いわゆる消費エネルギー量の他に、水道使用量、ゴミの量、車のガソリン使用量、その他が影響してきます。地球人として、その各項目を減少する努力をしなくてはなりませんが、今回は、消費エネルギーに限って削減率を検討します。標準となるCO2排出量(1世帯)は、表3の2地域の消費量をもとに、暖房、給湯は灯油、それ以外は電気が使用されたとして、計算によって求めた数値を使用します。(表4)
この表のように計算しますと、?地域における標準CO2排出量は 5761Kg/年・世帯となります。この数値を基準として、表2-B,CにピンクにてCO2排出削減率を塗りました。かなりすばらしい削減率です。しかも、当社のOB客様全ての方が、この数値に近い削減率を示します。 これからも、各県・各市町村において、家庭内CO2排出量削減の計画、目標が立てられる事と思います。「何%削減」が、目標とされるのでしょうか? ここで、声を大にして言いたいのですが、当社のOB客様のCO2削減率は、これからの目標ではありません。既に削減してきた実績なのです。築7年の方は、7年間、既にかなりの量のCO2削減を行ってきたのです。県庁に問い合わせたところ、家庭内CO2削減目標は、まだ具体的な数値になっていないそうです。「スタートラインから随分走ったのと、いまだに靴の紐を結んでいる位の差は有る」というのは、威張りすぎでしょうか?
「まとめに」
当社のお客様、4邸様の省エネ度合いを、4つの視点から検討させていただきました。「ゼロエネ達成」の喜びに浮かれ、やや筆の滑ったきらいは有りましょうが、「快適かつ省エネ」を地道に進めてきた結果が、1つ1つ実っていくような気がして、うれしく思います。もう5ヶ月ほどたちますと、昨年末までに完工、ご入居いただきましたお客様の年間光熱費データもいただけると思いますので、その時には、再度データをまとめて、へいへいほー誌上にて報告させていただきます。