耐震について|諏訪・松本・伊那の注文住宅ホームライト 長野県の気候に適した暖かい家づくり

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耐震について

耐震について

地震力と耐震性

 「地震に強い構造」は、誰しも、家造りに際して重要なポイントの一つに挙げるだろうと思います。しかし、その割には、「地震力、耐震性等について、しっかりとした説明を聞いたことがない。」と感じている方が多いと思います。「S社は、地震に強いらしい。」「ツーバイフォーは、地震に強いと聞いた。」「I社は耐震等級3とうたっている」と言った風に、断片の情報は耳に入るのですが、「さて、耐震性能とは?」と自問してみると、「そういえば、胸に落ちるような説明は受けたことが無いな」と思い当たる方が大半でしょう。これは、ひとえにビルダー側に責任があります。 木造(ツーバイフォーも含む)2階建て以下の建築物(住宅)は、一般に構造計算を必要としません。建築基準法における、耐震検討は、床面積に相応する壁量が満たされていればOKです。この簡易計算法は、精算値と大きなギャップを生じる場合がありますが、それよりも、簡易計算のため、地震力と、耐震性の基本的な関連が解りません。「耐震性は、建築基準法をクリアーしてます。」で済まし、それ以上の説明をしてこなかった結果、お客様が耐震性の説明に不満を感じるような状況が作られてしまったのです。 当社もそのレベルに関しては他社と同様であったと反省してます。
そんな訳で、当社は、耐震性能等の精算値の検証は「安藤構造設計事務所」に、お願いしてきました。下の写真は、安藤所長自らが地盤測量を行っている時のをお借りしたものです。気さくな方ですが、「日本の建築構造の大家 宮沢健二教授」に従いて住宅性能評価のノウハウを学んだ、構造のプロ中のプロとも言うべき人です。
今回は、一念発起して、この安藤所長の元、「地震力 耐震性能」をしっかり学び、耐震性の精算値計算をお客様に提供できるシステムを完成しました。その成果を聞いて下さい。

 


地震力とは

 先ず、地震力とは何かを述べます。地震力とは、地震の際に建物に働く力(加速度)のことです。図1を見て下さい。地震は、地下に震源を持ちますから、図のように下から突き上げてくる力と、家を横に揺らす力とが同時に存在します。私の親戚は、伊丹に住んでいて、阪神大震災の時には、ベットから天井まで放り上げられたと言っていました。かくばかりに、下から突き上げる力も凄まじいものですが、従来から、この下からの力は、建物を横に揺らす力の約50%と言われています。ゆえに、先ず第一に耐震性能として問題とするのは、横に揺らす力の影響=水平力に依る変形 です。

ポイント1、建物の耐震性能評価上、地震力=水平力と考える。 続いて図2を見て下さい。
ポイント2、地震力は、1・2階各々に働く。 これはちょっと分かりにくいのですが、木造の場合、1,2階は、別々に地震力に抵抗すると考えます。受け手が別々に受けるので、かかる力も別々に計算します。
ポイント3、地震力は、建物荷重に比例する。震源地から同じ方向に同じ距離で有れば、地面の揺れ具合は一緒です。即ち、自宅と、隣家の地面の揺れ具合は同じですが、建物にかかる地震力は、各々の家の重さで変わってきます。図3を見て下さい。同じ竹に刺した重さの違う団子があります。一枚の板の上に立てて、板を左右に揺すります。大きい団子の串の方が折れやすい(串に働く地震力が強い)というのは、直感できます。同じ震度地域にある家でも、屋根が瓦なのか、ガルバリュウム鋼鈑なのか、壁が板張りなのか、サイディング張りなのか、等に依って、各家に働く地震力は異なるのです。建築基準法では、この建物の荷重の20%を地震力と仮定した時に構造躯体が損傷しないことを耐震性の基準としています。


1・2階各々に働く地震力

 各家に働く地震力が異なるように、同じ家でも 各階に働く地震力は異なります。図4を見て下さい。1・2階にかかる地震力は、各階とも、その階の高さの1/2の位置に働くと考えます。各階とも地震力矢印の上部の荷重を背負います。この時1階に注目して下さい。1階の矢印より上部の荷重と言うことは、2階の荷重も背負うと言うことなのです。つまり、1階には、2階の約2倍の地震力が働くのです。「高い階の方が揺れが大きくて、危ないというように思っていませんでしたか?」、しかも1階は、大きい部屋が多く、壁が2階に比べ少ないのが一般的です。従って、耐震性の計算では、1・2階の壁バランスを考慮すれば、2階が問題になることは、滅多に有りません。




地震力と、耐震等級

 耐震等級1、2、3と言う表示をよく見かけるようになりました。2000年4月から施行された、品確法(※1)に基づく性能表示制度の中の1項目なのですが、1〜3へ数値が大きくなるほど耐震性能が高くなっています。耐震等級には、損傷防止と倒壊防止の2種類があります。両方とも耐震等級が同じで有れば、その耐震性能値は、全く同じですが、各々の対象とする地震の大きさは異なります。耐震等級1、を例にとると、耐震等級1の建物とは、震度5の地震の時、外壁が損傷しないし、かつ震度6〜7の地震に対して倒壊しない耐震性能を有する建物の事です。 下表にまとめてみました。


  損傷防止 倒壊防止
等級1 数十年に一度の地震(震度5)に対し、外壁が損傷しない 数百年に一度の地震 (震度6〜7)に対し、倒壊しない
等級2 1の1.25倍の地震に対し損傷しない 1の1.25倍の地震に対し倒壊しない
等級3 1の1.5倍の地震に対し損傷しない 1の1.5倍の地震に対し倒壊しない

 先程も述べましたように、耐震等級1は、建築基準法の基準で、地震力を、建物荷重の20%として、構造躯体の損傷を検討します。耐震等級3は、その1.5倍ですから地震力を、建物荷重の、30%として、構造躯体の損傷を検討することになります。
(※2)
  「ご自分の住む家の耐震性能を確実に理解する。」すごく安心ではないですか。
※1 住宅品質確保促進法2000,4月施行 性能表示制度は、2000,10月スタート
※2 地震力の実際の計算に当たっては、固定荷重(DL) 積載荷重(LL) 地震地域係数(Z) 振動特性係数(Rt) 地震層せん断力分布係数(Ai) の正確な数値を入力しますが、今回は、地震力の概略を理解していただくために、詳細な説明は省かせて頂きました。


建物の変形と耐力壁

 上記では「地震力とは?」と言う内容を説明させて貰いました。「耐震性能の検討における地震力とは、水平力の事であり、建物荷重に比例する」というののが、概略の結論でした。
 では、建物に、水平力がかかるとどうなるか?図1を参照して下さい。



 この様に建物にかかる水平力を、徐々に強くしていきます。すると、建物は、少しずつ変形をし始めます。「ミシミシ・・」と言った感じでしょうか。もう少し強く押しますと、窓ガラスが、変形に耐えきれず割れたり、外壁にひびが入ったりします。もっとどんどん押しますと、建物は、その限界の変形にまで達し、倒壊してしまいます。この様に、地震の際に、建物を損傷、倒壊せしめるのは、建物の変形の度合いによると言えます。この変形量は、各階の高さと(h)、変形の長さ(変位δ)の比で表します。
(層間変形θ=1/γ 変形率の事)ちなみに、外壁サイディングにひび割れが起きる限界のθは、1/120とされています。天井高が、2400だとすると、20ミリメートル=2センチメートルという事です。またモルタル外壁では、1/200 =1.2センチメートルの変位で、ひび割れが起こるとされます。
 この様に水平力は、建物に変形を起こさせようとします。それに対抗して、変形を防ごうとする性能を建物に持たせる必要があります。この変形に対抗する力こそが、耐震力であり、この耐震力を担っているのが「耐力壁」と呼ばれる壁です(図2参照)。
   図2 耐力壁の役割


 「耐力壁」の定義は、簡略しますと、「地震力に対して対抗する耐力を有した壁」という意味で耐力壁以外には、計算上地震力を負担させません(※1)。また、その強さに応じて、「壁倍率」という数値が設定されています。「壁倍率」は、壁の仕様によって違いますが、0.5倍〜5倍までと決められています。例えば、「在来木造の筋違いの入った壁は、壁倍率2倍、」「ツーバイフォーにおける構造用合板の貼られた壁は、壁倍率3倍」と規定されています。

 

耐力壁と地震力

 耐力壁は、ラクビーのスクラムの様に、全員で力を合わせて地震力に対抗します。しかし、図3.4のように、地震力に対して、足を縦に踏ん張る事が出来る耐力壁のみが力を合わせて対抗します。図5で見ると、X方向から来た地震には、X方向の耐力壁のみが対抗し、Y方向から来た地震には、Y方向の耐力壁のみが対抗します。地震は、どの方向から来るか分かりませんから、X,Y両方向に対して、各々耐震力を検討する必要があります。「斜めから来たらどうするか?」この場合は、角度によって、X、Y両方向で、地震力を分けて負担します。だから、斜めから地震が来た時だけは、1軒同階の耐力壁は、1つのチームにまとまって戦ってますね。また、地震力の項で記したように、「1階は、1階 」「2階は、2階」と言う具合に地震力に対抗しますので、同じX方向の耐力壁でも1,2階が協力し合うという事はありません。ちょっと例えは悪いのですが、1階の南北を守る部隊、東西を守る部隊、2階の南北を守る部隊、東西を守る部隊、の4部隊があり、各部隊は、援軍を当てにせず地震力と対戦し、1番弱い部隊が前線を突破された時に、建物に損傷が発生すると例える事ができます。

 
 

各階変形の計算

 

 壁倍率1倍の耐力壁1mは、図6のように、200kgの水平加力に対し、1/150以下の変形率(1/γ)として計算する事になっています。(30%強の安全率を見ている) 
 各階地震力を計算で求めた後、各階X,Y方向の耐力壁総長(壁倍率1倍に換算後)を求めると、各階X,Y方向の耐力壁(1m)にかかる水平力が計算できます。
この1mの耐力壁にかかる水平力と、変形率(1/γ)は比例関係にあります。ゆえに、[水平力200kg 時、 変形1/150]を基準比として計算すれば、各階X,Y方向の変形率(1/γ)を求める事が出来ます。そしてこの建物の外壁がサイディングの場合、各階X,Y方向の変形率が1/120以下であれば、想定した地震力に対し(例えば耐震等級3)「外壁が損傷しない」と結論できるのです。
 「壁量が多いほど地震に強い」と良く聞くのは、この各階の変形率(1/γ)の事を言っています(耐力壁量が多いほど変形しにくくなる)。品確法による性能表示では、この変形率1/γの精算解を要求していません。床面積に相応する耐力壁量を満たしていればよいとされています。つまり、「耐震等級3をクリアーしているが、その余裕率は検証できない」訳です。
 この各階変形率(1/γ)は、建物荷重が軽いほど、耐力壁量が多いほど、小さな数値に(変形しにくく)なりますが、この計算の時点では、壁の配置は問題としません。壁の配置バランス以前に、変形率1/γの数値基準をクリアーする事(耐力壁の量を満たす事)が、まず必要とされます。


壁のバランス良い配置 (剛性率、偏心率)

 同じ耐力壁量であっても、その配置バランスを整えると、建物全体の耐震性能は、アップします。(逆にバランスが悪ければダウンします)
 耐力壁の配置バランスは、2つの視点から検討せねばなりません。

A.1,2階のバランス B.各階平面におけるバランス
A.1,2階のバランスの事を 剛性率(Rs)といいます。

図7を見て下さい。各階変形率のバランスが悪いと、弱い階にさらに負担がかかります。地震時に、1階ピロティー(車通路等)の建物に被害が多かったりするのは、この原因が考えられます。この剛性率は、各階の 1/γと その平均値との比率ですから、単純に耐力壁の量で比較するわけにはいかず、1/γの精算解を求めない事には検証できません。先月号でも記したように通常1階にかかる地震力は、2階のそれの約2倍強であるのに対し、壁量は2階の方が多いのが一般的ですから,1,2階の剛性率は大きく違います。Rs≧0.6という基準内にこの数値を納めるには、かなりの調整をする必要がありますが、この詳細は、最後にまとめます。 
B.各階平面におけるバランスの事を偏心率(Re) といいます。
図8をご覧下さい。建物には、各階に重心(重さの中心)という点があり、計算でその位置を求める事が出来ます(※2)。また各階に、(耐力壁が作用する中心)剛心(※3)という点があり、同様に 計算でその位置を求める事が出来ます。この重心と剛心との距離を偏心距離と呼び、地震時には、剛心を中心(支点)とし、重心を力点とした回転力が働きます。この偏心距離が近いほど建物を回転させる力が小さいのですが、図9の様に、耐力壁が外部に配置されている方が、同じ偏心距離でも回転を抑える力が強くなります。この耐力壁の外部への配置の度合いを、ねじれ剛性といいます。偏心距離とねじれ剛性を含めて計算した数値が偏心率(Re)であり、木造の場合 Re≦0.3 とされていますが、Re≦0.15であれば、ねじれが発生しないので、Re≦0.15になる様、調整を心がけています。調整の詳細は、最後にまとめます。
 性能表示における略算法では、各階平面を X方向 Y方向を各々4分の1に分割し、規定によるバランスが保たれていれば良し、とされています。





剛性率 偏心率の調整

 ここまで述べて来たように、耐震性能には、1/γ(層間変形)Rs(剛性率)Re(偏心率)の3要素があります。自由設計の場合 この3点の中では、1/γ の確保が最も難しいと言えます。「どうしてもここの壁を抜きたい」「広々とした空間が欲しい」と言った要望は、自由設計としては、ごく当たり前であり、耐震性を表に出し、お客様の希望を制限するのは、ビルダーとして心苦しいものです。それでも、当社としては、お客様にお願いして、何とか耐震等級3をクリアーできる壁量を頂くようにしています。というのも、この γ さえ確保できれば、Rs 、Re は、お客様に我慢をして貰わずに、ある程度調整する事が可能だからです。
前段で述べましたが、耐力壁は、1階のX方向 Y方向 2階のX方向 Y方向の4部隊に分かれ、その4隊が、それぞれ 1/γの基準をクリアーせねばなりません。そして、その建物全体の耐震性能は、最も弱い部隊の 1/γの数値によって決定します。この1/γを増強する事が出来ずRs 、Re の値も基準をオーバーしているとき、困ってしまいますが、実は、他の部隊の耐力壁を弱める と言う方法によって、Rs 、Re を基準内に調整する事が、可能なのです。せっかくある耐力壁のいくつかを放棄する、壁倍率を下げると言った方法に依って調整するわけで、まさしく逆転の発想ですが、この耐震性能3要素の関連をよく考えると、理にかなった方法であると言えます。このRs 、Re の調整は、略算法ではなしえませんので、ここに精算解を求める最大のメリットがあると言えます。


まとめに

 いつものことですが、退屈な数字のオンパレードにお付き合い下さり有り難うございました。当社は、この特集を期として、耐震性能の検証計算書を、見積提出時に添付する事としました。耐震という重要な課題について、正確な検証が行えるようになったことを社の一歩前進として素直に喜んでいます。その計算ソフトの作製、及び、本稿チェックに、多大な助言、指導を頂いた安藤構造設計事務所 安藤所長に感謝すると共に、本特集の講評をもらい〆とします。


講評

 

 先日 工学院大学宮沢教授と歓談する機会を得ました。先生曰く「これから阪神大震災の社寺建築の損傷も調査したいと思っている」との事。とても我々は、そこまで考えが及びませんが、既存住宅の耐震診断も、いたずらに不安をあおり、高額で、過剰な補強に導くのでなく、適切に行っていきたいものです。
 釣りが、ヘラブナに始まり、ヘラブナで終わるように、建築構造は、木造に始まり木造に終わります。今回、ホームライトさんが、耐震性能に関する精算解検証システムを作り上げたことは、大変価値有ることだと思います。今後も、ますますご努力下さい。
安藤構造設計事務所所長  安藤君夫
※1)性能表示では、準耐力壁という考えを導入しています。
※2)地震力が働く高さ(各階高の1/2)ところを、スライスした平面の重心
※3)剛芯と記す場合も有り

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