第十五回.99新年に思った事
私の住んでいる地区では、元旦の朝六時から区民が氏子神社に初詣をする慣わしがある。今年は氏子総代という事で、受付当番となった。早朝五時過ぎマイナス十度位の気温の中、神社に向かった。神社の中にストーブニ台を持ち込み暖を取る事とした。冷えた空気は、時間と共に暖かくなると期待したわけではないが、マイナス五度位の室温にしか上がってこないのである。新年早々まさに身が引き締まる思いである。この『家づくり考』を掲載し始めて丸二年が経過した。この間、世間一般の不況は改善の方向さえ見えず、私どもの住宅建築において国の大がかりな政策(住宅金融公庫の金利、貸出し額等)にもかかわらず、相変わらず出口が見えてこない状況である。しかしながら、昨年改正となった「建築基準法」今年施行されると思われる「次世代省エネ基準法」等により、建物自体の性能のアップの必要が考えられる。これは以前にも申し上げたのだが、ユーザーさんにとっては、誠に良い状況になりつつあると言える。これからの住宅を考える時、いくつかの要素を備えた住宅造りが必要となる。四つの要素を基本とすべきと考えている。
高気密・高断熱をベースとして、更なる省エネルギーの住宅。これは長持ちをする家、健康的な家、快適な家、にも繋がってくる。?家の中の危険、障害物のないバリアフリーの住宅。高齢化社会であるからというより、若い人にとっても安全な家は必要である。?環境共生を考えた住宅。つまり、地球環境にも人にもやさしい家。エコロジーである。?地球の文化としての住宅。後の世までこの地の自然、風土になじむ家。??については、なかなか難しい問題もあろうかと思ってしまうのだが、今後造る側、注文する側が共々考えていく必要があり、大切なポイントだと考えている。当然これ以外にもいくつかの要素はあるのだが、四つの基本要素は常に考えていこうと思う。たくさん勉強し、研究し、ユーザーさんへ提案出来る様にしたい。元旦の朝八時、初詣の受付が終了し、社殿の外に出ると、境内の中は帯状の一九九九年の初日がまぶしく輝いている。良い年である事を祈念しつつ境内を後にした。